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東京高等裁判所 昭和33年(行ナ)15号 判決 1958年12月09日

原告 合資会社二葉商事

被告 特許庁長官

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一請求の趣旨、原因

原告訴訟代理人は、特許庁が昭和三十年抗告審判第二、六〇四号事件について昭和三十三年三月三日にした審決を取り消す訴訟費用は被告の負担とする、との判決を求め、請求の原因として次のとおり述べた。

一、原告は、昭和三十年六月十七日、第四十五類他類に属せざる食料品及び加味品を指定商品として、「御飯の友」なる文字を要部とする商標について登録出願をしたところ(同年商標登録願第一六、三五〇号)、特許庁審査官は同年十月二十九日附をもつて拒絶査定をしたので、原告は同年十二月五日に抗告審判を請求したが(同年抗告審判第二、六〇四号)、特許庁は、昭和三十三年三月三日、本願商標は登録第三六三、四四四号商標と観念上互に相紛らわしく、両者の指定商品も同一であるから、商標法第二条第一項第九号証に該当し、その登録は拒否を免れない、との理由のもとに、右抗告審判の請求は成り立たない、旨の審決をし、その審決書謄本は同月三十日に原告に送達された。

二、しかし、「御飯」とは炊いた米を指称する名詞であり、これに反して「食」とは抽象的文字であつて、用法により種々の意義を有するであろうが、両者は常識において顕著に観念を異にする。したがつて「御飯の友」と「食の友」とは、称呼はもちろん、観念上も明瞭に区別され、本願商標のその他の体裁模様等をも対照して、取引誤認混淆のおそれは毛頭もない。

本件審決の理由とするところは、明らかに社会通念に反し、常識を逸脱した違法があるので、とうてい取消を免れない。

第二答弁

被告指定代理人は、主文第一項通りの判決を求め、次のとおり答弁した。

一、原告主張の商標登録出願から、拒絶査定、抗告審判請求を経て、原告主張のとおりの審決がされ、その審決書謄本が原告主張の日に原告に送達されたことは、争わない。

二、原告は本願商標の「御飯の友」と引用登録商標「食の友」とは観念上も称呼上も異なり、両者は取引上誤認混淆のおそれは毛頭もない、と主張するが、本願商標の要部であると原告自ら主張する「御飯の友」と、審決引用の登録第三六三、四四四号商標の表現する「食の友」とは、共に「食事の友」すなわち食事に際して主食にそえて食べる副食物、ことにいわゆる「ふりかけ食」等を意味する語と解するのを相当とするものであるから、両者は観念において相共通するというべきである。「御飯」及び「食」の語が共に「食事」を意味することは、日常一般にこのように解せられているばかりでなく、それぞれの語義について各種の漢和辞典および国語辞典をひもとくことによつて一層明らかになるものである。

本願商標と引用の登録第三六三、四四四号商標とは、外観上及び称呼上区別し得る差異を有するとしても、観念において相共通するものであること、右に説明した通りであり、しかも両者の指定商品も同一であから、取引上相紛れるおそれの多い類似の商標と認めざるを得ず、商標法第二条第一項第九号の規定によつて、本願商標は登録適格を有しないものであること明らかであるから、これと同一理由のもとになされた本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がない。

第三証拠<省略>

理由

一、原告が昭和三十年六月十七日に第四十五類他類に属せざる食料品及び加味品を指定商品として「御飯の友」なる文字を要部とする商標につき登録出願をし(同年商標登録願第一六、三五〇号)、同年十月二十九日附で拒絶査定を受けたので、同年十二月五日に抗告審判を請求したが(同年抗告審判第二、六〇四号)、昭和三十三年三月三日、本願商標は登録第三六三、四四四号商標と観念上相紛らわしく、指定商品も同一であるから、商標法第二条第一項第九号に該当し、その登録は拒否を免れない、との理由のもとに、右請求は成り立たない、との審決がされ、同月三十日にその審決書謄本が原告に送達された事実については、当事者間に争がない。

二、本願商標が「御飯の友」なる文字を要部とすることは前記のとおり原告の自ら主張するところであり、これに対して、審決が原告の登録出願拒絶の理由として引用した登録第三六三、四四四号商標は、「食の友」の文字を楷書体で縦書して成り、第四十五類他類に属せざる食料品及び加味品を指定商品として昭和十七年九月二十三日出願、昭和十九年九月九日の登録にかかるものであることは、真正の成立につき争のない乙第二号証の一により明らかである。ところで、「御飯」とは元来「めし」すなわち炊いだ米を指称する語であるが、その変化せる用法において、食事一般をていねいにいう場合にも用いられ、一方「食」も食事を意味する語であることは、真正の成立につき争のない乙第一号証の三、四、五(広辞苑)の記載によつても明らかな事実である。してみれば、「御飯の友」も「食の友」も、ひとしく、一般的に食事の伴侶たるべきもの、すなわち、主食とともに食用に供せられるものを意味するものというべきであり、両者は観念を共通にするといわなくてはならない。成立に争のない甲第一号証の本願商標見本を見るのに、本願商標は「御飯の友」なる文字のほかに、波間に躍る鯛及び海老の図形や、「栄養副食」その他附記的のものと認むべきいくらかの文字などをもつて構成されていることが明らかであるが、本願商標が「御飯の友」なる文字をもつて要部とすることは、原告の自ら認めるところであるので、それに右文字以外の部分の存することは、本願商標が引用登録商標と観念を共通にする事実を左右するに足るものではない。

三、本願商標が引用登録商標と観念を共通にすることは、以上に認定した通りであり、かつ両者が指定商品をも共通にすることは、原告の明らかに争わないところであるので、本願商標は商標法第二条第一項第九号に該当し、その登録は許されないものといわなくてはならない。これと認定を一にする本件審決にはこれを取り消すべき違法の点がない。

よつて、原告の請求を理由なしと認め、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟特例法第一条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 内田護文 原増司 入山実)

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